有害金属とミネラル

金属は体に悪くて、ミネラルは良いの?

ミネラルというと、健康によいというイメージがありますが、昔懐かしい元素周期表の中から水素、炭素、窒素、酸素の4つを除いたものがすべてミネラルです。
ミネラルは、その性質や密度により、それぞれ非金属、軽金属、重金属のいずれかに分類されています。この中には日本人に不足気味と言われているマグネシウムや亜鉛なども含まれていますし、健康問題がよく知られている水銀やヒ素、鉛も含まれています。一方、銅や鉄が体にとって必要なことは誰もが知っています。従って、必ずしも、金属=体に悪い、ミネラル=体に良い、ではないのです。
また、体に必要なミネラルであっても、適切な量を摂取することが重要であり、不足しても摂り過ぎても体の状態に影響を及ぼします。

潜在的に有害なミネラル

アルミニウム(Al)

  • アルミニウムは、飲料缶、鍋やフライパン、アルミホイル、合金など、日常的に使われる製品に含まれています。また、炉の裏張り、制酸剤、制汗剤、収れん剤、バファリン、化粧品、歯磨き粉、ベーキングパウダー、一部の食品添加物にも含まれます。
  • 暴露量が増加すると、肺疾患、骨軟化症、神経毒性などが生じる可能性があります。また、高濃度のアルミニウム暴露はアルツハイマー病の潜在的原因としても疑われています。

アンチモン(Sb)

  • アンチモンは鉛、スズ、銅と合金され、その合金は電池、低摩擦金属、活字合金、ケーブル外装などに使用されます。アンチモン化合物は、耐炎材料、塗料、セラミックエナメル、ガラス、セラミックの製造に使用されます。
  • 暴露量が増加すると、呼吸器への刺激、じん肺症、アンチモン疹、消化器症状を引き起こすことがあります。また、三酸化アンチモンは発がん性がある可能性があります。

ヒ素(As)

  • ヒ素は一般的な家庭用品にみられ、毒性が高レベルに達すると命にかかわる可能性があります。ヒ素の一般的な暴露源には、自動車の電池、アスファルト、木材防腐剤、一部の井戸水、メガネ、電子機器、半導体、酸化鉛、米、魚介類、一部の殺虫剤および除草剤が含まれます。
  • 暴露量が増加すると、呼吸器/消化管への刺激、リンパ球減少症、貧血、不安、先天性異常、抑うつ、皮膚の色素沈着過剰症、神経障害を引き起こすことがあります。

バリウム(Ba)

  • バリウムは油井やガス井の掘削液に最も多く含まれ、塗料やガラスの製造にも使用されています。バリウムのその他の一般的な暴露源には、信号弾や花火などがあります。また、バリウムは消化管の画像診断にも用いられます。
  • バリウムへの暴露量が一貫して上昇している場合、激しい腹痛、痙攣、下痢、便秘、耳鳴り、発汗、錯乱、頻脈および脱力を生じることがあります。

ベリリウム(Be)

  • ベリリウムは、ばね、電気接点、スポット溶接電極、防爆工具などに広く使用されているベリリウム銅を製造する際の合金化剤として使用され、高速航空機、ミサイル、宇宙船、通信衛星などの構造材料として応用されています。
  • ベリリウムへの暴露量が一貫して上昇していて、ベリリウム含有材料からの粒子、蒸気、噴霧、溶液にさらされた場合、ベリリウム感作や慢性ベリリウム症(障害や死をもたらす可能性のある呼吸器疾患)を生じることがあります。

カドミウム(Cd)

  • カドミウムは、電池や金属メッキを用いた機器が増えるにつれて、ますます多くの日用品に含まれるようになっています。その他の一般的な暴露源としては、アスファルト、顔料、プラスチック、塗料、はんだ付け、半導体、印刷物、織物、貝類、肝臓および腎臓の肉、タバコの煙、肥料、ゴム、殺菌剤などがあります。
  • バリウムへの暴露量が一貫して上昇している場合、呼吸器/消化管への刺激、腎毒性、貧血、不安、先天性異常、前立腺がん、自己免疫疾患、免疫抑制、不妊を生じることがあります。

セシウム(Cs)

  • セシウムは一般的なミネラルであり、リチウム金属が生産される際の副産物として生じます。日常的な暴露源には、原子時計、光導電セル、特定の有機化合物の水素化の触媒などがあります。
  • 安定セシウムへの暴露による健康への悪影響は知られていません。

ガドリニウム(Gd)

  • ドリニウム造影剤を体内に注入すると、MRIの画質が向上・改善します。
  • ガドリニウム含有造影剤は、重度の腎不全患者において、腎性全身性線維症と呼ばれるまれではありますが重篤な疾患のリスクを増大させる可能性があります。ガドリニウムの毒性症状には、持続性の頭痛、骨、関節、腕、脚の激しい痛み、ピリピリした感覚、切られるような感覚、灼熱感などがあります。その他の症状には、認知障害、意識混濁(「脳霧」)、悪心および嘔吐、軟部組織、腱および靭帯の肥厚、手足のこわばりなどがあります。

鉛(Pb)

  • 鉛は、鉛クリスタルガラス、釣り用重り、殺虫剤、電池、パイプ、屋根材、コーキング、バックル、石油精製品、放射線防護、顔料、塗料、プラスチック、セラミック、テレビ用ガラス、真鍮、青銅、弾薬、ガソリン、ロウソクの芯、毛髪染料、化粧品、さらには飲料水を含む多くの一般的な家庭用品にみられます。
  • 鉛への暴露量が一貫して上昇している場合、消化器症状、疝痛、貧血、神経障害、心電図異常、不妊症、発達遅滞、腎疾患、精神運動発達遅滞、疲労、不安、免疫毒性、がんを生じることがあります。

水銀(Hg)

  • 水銀は多くの身近な家庭用品や食品に含まれるほか、アマルガム(銀)の歯科充填剤がある人にもみられます。その他の一般的な暴露源としては、温度計、電池、蛍光灯、魚およびその他の魚介類、顔料、美白クリーム、花火、殺虫剤、農薬、写真撮影、はく製術、電気機器、1990年以前の織物および内装用塗料があげられます。病院の廃棄物を含む医療環境でもよくみられます。
  • 水銀への暴露量が一貫して上昇している場合、疲労、神経毒性、情緒障害、神経障害、性欲の変化、先天性異常、唾液分泌過剰、震え、易刺激性、月経障害、自己免疫疾患を生じることがあります。

パラジウム(Pd)

  • パラジウムは、水素化油の製造における触媒反応に用いられるほか、宝飾品、歯科充填材、歯冠などに広く使用されています。しかし、ロジウムやプラチナと同様、パラジウムは自動車排気系の三元触媒コンバータを主な用途とします。
  • パラジウム暴露は、皮膚、目、または気道への刺激を引き起こすことがあります。パラジウムを含む液体混合物は、皮膚や目にやけどを引き起こすことがあります。

プラチナ(Pt)

  • プラチナは宝飾品に広く使用されています。プラチナ触媒は、肥料、プラスチック、合成繊維、薬物および医薬品を含む化合物を製造するためにも使用されます。プラチナはほとんどの触媒コンバータに含まれ、その他の自動車部品にも使用されています。
  • 金属は無害ですが、白金塩はヒトの健康に有害なことがあります。聴覚障害、骨髄や腎臓の障害、がん、DNAの変化を引き起こすことがあります。白金塩は腸の損傷やアレルギー反応も引き起こします。短期間の暴露は、咽頭、鼻、目への刺激を引き起こすことがあります。

銀(Ag)

  • 銀は銅、鉛、亜鉛、金の副産物として多く生産されます。銀は、宝飾品、銀製品、電子機器、および歯科用充填材の製造に用いられます。また、写真の作成、ろう付けに用いる合金やはんだ、飲料水やプールの水の消毒、抗菌剤などにも使用されています。銀は禁煙を補助するトローチやガムにも使われます。
  • 硝酸銀や酸化銀などの銀化合物を比較的高濃度に含む粉塵に暴露すると、呼吸障害、肺や喉への刺激、腹痛を引き起こすことがあります。これらの影響は、硝酸銀および酸化銀の化学製造施設の労働者において認められています。銀化合物との皮膚接触は、発疹、腫れ、および炎症などの軽度のアレルギー反応を引き起こすことがわかっています。

タリウム(Tl)

  • タリウムは半導体や赤外線機器に使われ、ガラス製造にも少量使われます。また、タバコの煙に含まれ、花火、顔料、宝飾品に使われることがあります。
  • タリウム暴露は、神経系、肺、心臓、肝臓、腎臓に影響を及ぼすことがあります。一時的な脱毛、嘔吐、下痢も起こることがあり、多量のタリウムに短期間暴露すると死に至ることがあります。

トリウム(Th)

  • トリウムは天然物質であり、シリカなどの他のミネラルとの組み合わせで存在します。トリウムは、セラミック、ガスランタンのマントル、航空宇宙産業や核反応に用いられる金属の製造に用いられます。トリウムは原子力発電の燃料としても利用されます。
  • 労働者がトリウム粉塵を吸い込んだ場合、暴露後何年も経ってから肺疾患および肺または膵臓のがんを発症することがあります。

スズ(Sn)

  • スズには多くの用途があります。スズでコーティングされた鋼でできたスズ缶など、腐食を防ぐために他の金属をコーティングするのに使われます。塩素、硫黄、または酸素のような化学物質との組み合せは、無機スズ化合物(塩化スズ、硫化第一スズ、酸化スズ)と呼ばれ、歯磨き粉、香料、石鹸、食品添加物および染料に使用されます。
  • 無機スズ化合物に短期間大量に暴露すると、皮膚および目への刺激、呼吸器への刺激、消化管への影響、神経障害を引き起こすことがあります。神経障害は暴露してから何年も持続することがあります。大量に摂取した後に死亡した症例も報告されています。有機スズは内分泌かく乱物質であり、オビーソゲンでもあると考えられています。

チタン(Ti)

  • 二酸化チタン中に含まれるチタンは、歯磨き粉、キャンディー、甘味料、ガムなどの広範な製品に含まれる白色色素に光沢を与えるほか、粉末ドーナツ、白いケーキのアイシング、マヨネーズ、ヨーグルトにも使用されています。チタンは、ドリルビット、自転車、ゴルフクラブ、時計、ノートパソコンなどの製品にも使用されています。
  • 産業暴露が一貫して上昇している場合、粉塵吸入によって胸部の圧迫感や痛み、咳、呼吸困難を生じることがあります。皮膚や目に触れると刺激を引き起こすことがあります。食品中の二酸化チタンは、米国食品医薬品局によってGRAS(一般に安全とみなされている)の評価が与えられています。

タングステン(W)

  • タングステンおよびその合金は、電球フィラメント、X線を発生させるX線管の部品、化学反応を促進する触媒、高速度工具、タービンブレード、レコード針の鋼材成分、溶接電極、ジャイロスコープホイール、平衡錘や釣り用の重り、ダーツ、ゴルフクラブに使用されています。
  • タングステンまたはタングステン化合物への暴露に関連した健康への影響が生じる可能性はあまりありません。大量のタングステン化合物に暴露した動物においては、呼吸障害や行動の変化が認められています。

ウラン(U)

  • 食品、大気、土壌、地下水にはウランが自然に含まれるため、ウラン暴露はこれらのものを介して起こります。根菜類などの食品や水は、天然のウランへの少量の暴露をもたらします。
  • 天然に存在するウランは主に腎臓に蓄積されます。ウラン化合物の吸入または摂取後、ヒトおよび動物に腎障害が認められています。ヒトにおいて、ウラン化合物の吸入または摂取後に一貫して認められている腎障害以外の健康への影響はありません。

ジルコニウム(Zr)

  • ジルコニウムは、写真用閃光電球や手術器具、テレビ用ガラスの製造、電子真空管からの残留ガスの除去、合金、特に鋼の硬化剤として使用されています。紙・包装産業においては、耐水性と強度を目的とした表面コーティングにジルコニウムが使用されています。
  • 暴露によって、気道、鼻および喉の粘膜、皮膚および目への刺激を生じることがあります。長期にわたる慢性暴露は、肺水腫および皮膚炎を引き起こすことがあります。

必須及び微量ミネラル

クロム(Cr)

  • クロムは、岩石、動物、植物、土壌、火山の粉塵やガス中に存在する天然のミネラルであり、必須栄養素の一つです。クロムは、体内での炭水化物、脂肪、およびタンパク質の代謝および貯蔵に不可欠なホルモンであるインスリンの作用を増強することが知られています。クロムは、鋼鉄製造、クロムメッキ、染料および顔料、革なめしおよび木材保存にも使用されます。クロムの大気中への放出は、クロムを使用または製造している産業、クロムを含む有害廃棄物施設、またはタバコの煙から起こることがあります。
  • クロム欠乏は、体がエネルギー需要を満たすためにグルコースを利用する能力を損ない、インスリン必要量を高めます。クロム欠乏の症状には、重度の耐糖能障害、体重減少、末梢神経障害、錯乱などがあります。
  • 環境中のクロムに暴露した労働者には、気道に関する健康問題が最もよくみられます。また、クロム化合物に対するアレルギーを発症し、呼吸困難や発疹を引き起こすこともあります。栄養補助食品として摂取されたクロムレベルの上昇は、胃の問題、血糖値の低下、腎臓や肝臓の障害を引き起こすことがあります。

コバルト(Co)

  • コバルトは、岩石、土壌、水、植物、動物に存在する天然のミネラルです。コバルトは、航空機エンジン、磁石、研削・切削工具、人工股関節、人工膝関節の製造に用いられる合金に使用されています。コバルト化合物はガラス、セラミック、塗料の色付けにも使用され、ほうろうや塗料の乾燥材として使用されています。
  • コバルトはヒトの健康維持に不可欠なビタミンB12の一部であるため、ヒトに有益です。コバルトは赤血球を増加させるため、貧血の治療薬としても用いられています。
  • コバルトが体内に取り込まれ過ぎると、健康に有害な影響が生じることがあります。高濃度のコバルトを含む空気を6時間吸い込んだ労働者では、呼吸困難が認められています。また、コバルト-タングステンカーバイドの硬質合金を扱っている最中にコバルトに暴露した人では、喘息、肺炎、喘鳴などの重篤な肺への影響が認められています。また、職場で高濃度のコバルトに暴露した人は、コバルトに対するアレルギーを発症し、喘息や皮膚の発疹を生じることが報告されています。

銅(Cu)

  • 銅は、岩、土壌、水、空気などの環境中に自然に存在し、飲食や呼吸によって体に吸収されます。銅は、ワイヤー、配管パイプ、板金など、さまざまな製品にも使われています。銅を他の金属と合金させた真鍮や青銅は配管や蛇口に使用されます。銅化合物は、農業においてうどんこ病などの植物病の治療に用いられるほか、水処理、および木材、皮革、布地の防腐剤として一般的に使用されています。
  • 銅は必須栄養素です。鉄と同様、赤血球の形成を助けます。健康な骨、血管、神経、免疫機能を維持するのに役立ち、鉄吸収に寄与します。銅が欠乏することはまれであり、適切な銅補給によって治療できます。
  • 銅の粉塵への暴露が増加すると、鼻、口、目を刺激し、頭痛、めまい、悪心、下痢を引き起こすことがあります。銅を正常値よりも多く含む水を飲むと、悪心、嘔吐、胃けいれん、下痢が起こることがあります。

鉄(Fe)

  • 鉄は、金属の中で最も多く使われており、世界で生産される全金属の95%を占めています。その用途は、食品容器から乗用車、スクリュードライバーから洗濯機、貨物船からホチキスまで多岐にわたります。鋼は最もよく知られた鉄の合金であり、鉄のその他の形態には、銑鉄、鋳鉄、炭素鋼、鍛錬鉄、合金鋼、および酸化鉄などがあります。
  • 鉄は多くの食物中に天然に存在し、栄養補助食品としても利用されています。鉄はヘモグロビンの必須成分です。ヘモグロビンは赤血球中に存在するタンパク質で、肺から組織に酸素を運び、代謝を助け、成長、発達、正常な細胞機能、一部のホルモンや結合組織の合成にも必要です。鉄の欠乏は貧血の最も一般的な原因であり、その兆候には、胃腸障害および認知機能障害、免疫機能の低下、運動や仕事におけるパフォーマンスの問題、体温調節機能の低下などが含まれます。
  • 鉄過剰症とは、体内で鉄が過剰に蓄積される状態をいいます。重要臓器の鉄過剰は、たとえ軽度であっても、肝疾患(肝硬変、がん)、心臓発作または心不全、糖尿病、変形性関節症、骨粗鬆症、メタボリックシンドローム、甲状腺機能低下症、性腺機能低下症のリスクを高
  • めます。

リチウム(Li)

  • リチウムは天然に存在するアルカリ金属であり、食物から摂取され、体内にも微量に存在します。リチウムは、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ、電気自動車用の充電式電池にも含まれており、心臓ペースメーカー、おもちゃ、時計用の一部の非充電式電池にも使用されています。アルミニウム-リチウム合金は、航空機、自転車のフレーム、高速列車などに使用されています。炭酸リチウムは双極性障害の治療薬として用いられています。
  • 葉酸とビタミンB12はともに、利用に十分なレベルのリチウムを必要とします。葉酸およびビタミンB12は最適な脳機能に必要な重要な栄養素であり、いずれかのレベルが低いと、抑うつ、易刺激性、精神状態の変化、認知能力の低下、精神的および身体的体力の低下、および様々な神経学的問題を引き起こす可能性があります。
  • リチウム暴露の増加は、悪心、下痢、めまい、筋力低下、疲労、放心状態を引き起こすことがあります。震え、頻尿、口渇、体重増加も起こることがあります。

マンガン(Mn)

  • マンガンは骨の形成、アミノ酸、コレステロール、炭水化物の代謝に関与する必須栄養素です。マンガンは通常、地下水、飲料水、土壌中に低濃度で含まれています。マンガン粉塵は鉄鋼製造においてみられるほか、マンガンは採鉱環境、自動車の排気ガス、タバコの煙にもみられます。
  • マンガン欠乏症は、糖尿病、骨粗鬆症、てんかんなどの慢性疾患を伴うことがあります。マンガンは正常な骨格の発達に必要であるため、低濃度は骨格および姿勢の異常の一因となることがあります。
  • マンガンを含む粉塵や蒸気を大量に吸入すると、肺機能が損なわれることがあります。

モリブデン(Mo)

  • モリブデンは環境中に存在する必須ミネラルであり、主に酵素の必須補因子として働き、脂肪や炭水化物の代謝を助けます。モリブデンへの暴露は、主に穀類、豆類、ナッツ類、乳製品などのモリブデンを含む食品を食べることで起こります。モリブデンは、ステンレス鋼合金や石油産業においても使用され、石炭やガスの液化プロセスにおける有機硫黄化合物の除去を触媒します。
  • モリブデンが欠乏することはまれですが、硫黄を含むアミノ酸の代謝を妨げることがあります。こういった問題は、頭痛、発作、視覚の変化、神経障害などの症状を引き起こすことがあります。
  • 工業的環境におけるモリブデン粉末または粉塵は、吸入すると人体に悪影響を及ぼす可能性があります。接触した場合、皮膚、目、鼻、咽喉を刺激し、頭痛、疲労、食欲不振、関節痛、筋肉痛を引き起こすことがあります。長期間暴露すると、肝臓や腎臓が損傷を受けることがあります。

ニッケル(Ni)

  • ニッケルは、多くの食品にみられる一般的な微量ミネラルです。ニッケルは、鉄の吸収を増やしたり、貧血を予防したり、弱い骨(骨粗しょう症)を修復するために体内で使われます。ニッケルは、ニッケル、ニッケル合金、またはニッケル化合物を製造または使用する産業によっても大気中に放出されます。また、石油火力発電所、石炭火力発電所、ごみ焼却炉などからも排出されています。ニッケルアレルギーは、イヤリングや他の宝飾品と関連することがあります。ニッケルは、硬貨、ジッパー、携帯電話、メガネフレームなど、日常的に使われる多くのアイテムにも含まれています。
  • ニッケルが欠乏することはまれですが、皮膚の色の変化、ホルモンの不均衡、骨の成長異常などの兆候や症状がみられることがあります。ニッケル欠乏は、カルシウムやビタミンB12の代謝にも影響を及ぼすことがあります。
  • ニッケルを含む宝飾品などが長期間皮膚に直接接触すると、ニッケルに対して敏感になることがあります。最もよくみられる反応は、接触部位の発疹です。頻度は低いですが、ニッケルに敏感な人は、ニッケルへの暴露後に喘息発作を起こすことがあります。ニッケル製錬所またはニッケル加工工場の労働者は、慢性気管支炎および肺機能低下を起こすことがあります。

ルビジウム(Rb)

  • ルビジウムは超微量ミネラルとして知られ、真空管内で微量ガスと結合して真空管から除去する材料であるゲッターとして用いられます。光電池や特殊ガラスの製造にも使われています。ルビジウム塩は、紫色を与えるためにセラミックや花火に使われます。コーヒー、紅茶、果物、野菜、特にアスパラガスには多量のルビジウムが含まれ、家禽や魚にもみられることがあります。
  • ルビジウムは経口摂取により中等度の毒性を示します。ルビジウムが発火すると、熱傷を起こします。ルビジウムは皮膚の水分と容易に反応して水酸化ルビジウムを形成し、目や皮膚の化学熱傷を引き起こします。

セレン(Se)

  • セレンは土壌中に存在し、一部の食品(全粒穀物、ブラジルナッツ、ヒマワリの種子、魚介類など)に天然に存在するミネラルです。セレンは体内では産生されませんが、甲状腺や免疫系が正常に機能するために必要です。セレンは、ガラス産業においてガラスの脱色、赤色ガラスやエナメルの製造にも用いられ、多くの化学反応の触媒として用いられます。セレンは太陽電池や光電池、現像トナーなどに使用されています。
  • セレンの欠乏は、心疾患の一種であるケシャン病や男性の不妊症を引き起こすことがあります。また、疼痛、腫れ、関節可動域の低下を引き起こす関節リウマチの一種であるカシン・ベック病を引き起こすこともあります。
  • セレンを製造、加工、または商品に変換する産業で働く人々、またはその近くに住む人々は、大気中に含まれる高濃度のセレンに暴露する可能性があります。高濃度のセレンへの短期間の経口暴露は、悪心、嘔吐、下痢を引き起こすことがあります。大気中に含まれる高濃度のセレン元素または二酸化セレンに短時間暴露すると、気道への刺激、気管支炎、呼吸困難、腹痛を引き起こすことがあります。長期暴露は、呼吸器への刺激、気管支痙攣、および咳を引き起こすことがあります。

ストロンチウム(Sr)

  • ストロンチウムは自然界に存在し、よくみられるミネラルです。岩石、土壌、粉塵、石炭、石油、表層水、地下水、大気、植物、動物には様々な量のストロンチウムが含まれます。炭酸ストロンチウムのようなストロンチウム化合物は、セラミックやガラス製品、火工品、塗料用顔料、蛍光灯、医薬品、およびその他の製品の製造に用いられます。塩化ストロンチウム六水和物は、知覚過敏の痛みを軽減するために歯磨き粉に添加されます。また、ラネル酸ストロンチウムは、一部の骨粗鬆症治療薬の成分として用いられています。
  • 複数の二重盲検試験において、骨粗鬆症の閉経後女性を対象に、ストロンチウム170~680 mg/日(ラネル酸ストロンチウムとして)を2~5年間投与したところ、プラセボと比較して股関節および脊椎の骨密度が有意に増加し、骨折発生率が有意に16~49%低下しました。その後の7件の試験および公的に入手可能な5件の規定文書のレビューにより、ラネル酸ストロンチウムによって予防された骨折の数は、この化合物によって引き起こされた静脈血栓塞栓症、肺塞栓症、および心筋梗塞の症例数とほぼ同じであることが結論づけられています。
  • 環境中に典型的にみられるレベルでは、安定ストロンチウムがヒトに及ぼす有害な影響はありません。吸入により多大な害を及ぼす安定ストロンチウムの唯一の化学形態はクロム酸ストロンチウムですが、これはストロンチウム自体ではなく有害なクロムによるものです。ストロンチウムを異常に多く食べたり飲んだりしている小児では、特に食事中のカルシウムやタンパク質が少ない場合に、骨の成長に問題が生じることがあります。

バナジウム(V)

  • バナジウムは、土壌、水、および空気中に天然に存在するミネラルです。バナジウムは、耐食鋼、ばね鋼、高速度工具鋼の製造に使用されます。バナジウムの環境への放出は、産業発生源、特にバナジウムを多く含む燃料油や石炭を使用する製油所や発電所と関連しています。硫酸バナジルおよびメタバナジン酸ナトリウムは栄養補助食品に使用されています。
  • バナジウムの推奨用量を確立するのに十分な科学的エビデンスはありません。糖尿病の実験的治療のためにメタバナジン酸ナトリウムまたは硫酸バナジルを服用している人に、悪心、軽度の下痢、胃痙攣が報告されています。バナジウム約13 mg/日を服用している人を対象とした研究でも、胃痙攣が報告されています。
  • 五酸化バナジウムを含む空気を吸い込むと、暴露後何日も続く咳を引き起こすことがあります。

亜鉛(Zn)

  • 亜鉛は大気、土壌、水中に存在し、すべての食品に含まれます。亜鉛化合物は、ビタミンサプリメント、日焼け止め、オムツかぶれ軟膏、デオドラント、アスリート用フットクリーム、にきび・うるしかぶれ用製剤、フケ止めシャンプーなどの成分として用いられています。亜鉛化合物は工業的にも広く使用されています。硫化亜鉛や酸化亜鉛は、白色塗料やセラミックの製造に使われるほか、ゴムの製造にも使われています。酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛は、木材の保存、織物の製造・染色などに使用されています。塩化亜鉛は発煙弾の煙の主成分でもあります。
  • 食事中の亜鉛が十分ではない場合、食欲不振、味覚と嗅覚の低下、免疫機能の低下、創傷治癒の遅れ、皮膚潰瘍などが起こります。妊婦が亜鉛を十分に摂取していない場合、胎児に先天性異常がみられることがあります。逆に、短期間でも大量の亜鉛(推奨摂取量の10~15倍)を経口摂取すると、胃痙攣、悪心、嘔吐が起こることがあります。高濃度の亜鉛を数カ月間摂取すると、貧血、膵臓の損傷、HDLコレステロールの低下を引き起こすことがあります。亜鉛を高濃度で補給すると、銅欠乏症を引き起こすことがあります。
  • 工業的環境、特に溶接による酸化亜鉛への暴露は、「金属ヒューム熱」を引き起こすことがあります。これはインフルエンザ様の疾患で、口の中の金属味、頭痛、発熱と悪寒、痛み、胸部圧迫感と咳の症状を伴います。

カルシウム(Ca)

  • カルシウムは多くの食品にみられるミネラルです。体が強い骨を維持し、多くの重要な機能を果たすためには、カルシウムが必要です。カルシウムのほとんどは骨や歯に蓄えられ、それらの構造や硬さを支えています。また、筋肉を動かし、神経が脳と体のあらゆる部位との間で信号を伝えるのにもカルシウムが必要です。さらに、カルシウムは、血管が全身に血液を運ぶのを助け、人体のほぼすべての機能に影響を及ぼすホルモンや酵素を放出するのを助けるためにも使われます。
  • カルシウムの摂取量が不足しても、体が骨からカルシウムを取り出して血液中のカルシウム濃度を維持するため、短期的には明らかな症状は現れません。カルシウムの摂取量が長期にわたって推奨レベルを下回ると、骨量の低下(骨減少症)や骨粗鬆症および骨折のリスク増大など、健康上の問題が生じます。重篤なカルシウム欠乏症の症状には、手指のしびれや刺痛、けいれん、不整脈などがあり、不整脈は放置すると死に至ることがあります。
  • カルシウムを過剰に摂取すると、便秘を起こすことがあります。また、鉄や亜鉛を吸収する身体の能力にも支障をきたす可能性がありますが、この影響は十分に確立されていません。成人では、(食品ではなく栄養補助食品からの)カルシウムの摂取量が多すぎると、腎結石のリスクが高くなります。カルシウムを大量に摂取する人は、前立腺がんや心疾患のリスクが高くなる可能性があることを示す研究もありますが、関連を理解するためには、さらなる研究が必要です。

マグネシウム(Mg)

  • マグネシウムは多くの食品に自然に存在し、食品添加物、栄養補助食品、制酸薬や緩下薬などの一部の薬に使用されています。マグネシウムは、タンパク質合成、筋肉および神経機能、血糖コントロール、および血圧調節を含む体内の多様な生化学的反応を調節する300以上の酵素系における補因子です。マグネシウムは骨の構造発達に寄与し、DNA、RNA、抗酸化物質グルタチオンの合成に必要です。また、マグネシウムは細胞膜におけるカルシウムおよびカリウムイオンの能動輸送においても役割を果たし、この過程は神経の興奮伝導、筋収縮、および正常な心拍リズムに重要です。
  • 腎臓がマグネシウムの尿中排泄を制限するため、健康な人では食事からの摂取量が少ないことによる症候性マグネシウム欠乏症はまれです。特定の健康状態、慢性アルコール依存症、および/または特定の薬物の使用によるマグネシウム摂取量の減少または過剰な損失は、マグネシウム欠乏症を引き起こすことがあります。マグネシウム欠乏症の初期兆候には、食欲不振、悪心、嘔吐、疲労、脱力などがあります。マグネシウム欠乏症が悪化すると、しびれ、刺痛、筋肉の収縮とけいれん、発作、人格の変化、不整脈、冠動脈攣縮が起こることがあります。重度のマグネシウム欠乏症では、血清カルシウム値や血清カリウム値が低下します。
  • 腎臓が過剰なマグネシウムを尿中に排泄するため、食物中のマグネシウムの量が多すぎても健康な人には健康上のリスクはありません。栄養補助食品や薬剤からマグネシウムを大量に摂取すると、しばしば軟便となり、吐き気や腹部痙攣を伴うことがあります。軟便を引き起こすことが最も多く報告されているマグネシウムの形態には、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、および酸化マグネシウムがあります。

リン(P)

  • リンは、血液、筋肉、神経、骨、歯にみられる非金属ミネラルであり、アデノシン三リン酸(ATP:体の細胞の主要なエネルギー源)の成分です。リンは骨を健康に保つのに役立ちます。また、血管や筋肉の機能維持にも役立ちます。リンは、肉、魚、ナッツ、豆類、乳製品などのタンパク質に富む食品中に自然に存在します。また、リンは多くの加工食品に添加されます。
  • リンの摂取が十分ではない場合、筋力低下、疲労、運動耐性の低下を引き起こすことがあります。カルシウムやビタミンDとともにリンが不足すると、徐々に骨が弱く、軟らかくなり、関節や筋肉の痛みを引き起こします。
  • リン濃度の上昇は腎疾患を引き起こすことがあります。リンを摂り過ぎ、カルシウムが不足すると、リンが過剰になることがあります。リン濃度が高すぎたり低すぎたりすると、心疾患、関節痛、疲労などの医学的合併症を引き起こすことがあります。

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