*遅延型アレルギー(食物過敏)とは

遅延型アレルギー(食物過敏)とは

即時型アレルギーが原因食物を摂取後すぐに反応するのに対し、遅延型アレルギーは原因食物を摂取してから反応するまでに時間がかかるため原因に気づきにくいアレルギーです。このため、遅延型、遅発型、食物過敏などと呼ばれています。

免疫に関する研究は100年以上前から行われていますが、未だ解明されていないことが多くあります。厚生労働省のホームページには、IgE抗体によるアレルギー反応の他にも非IgEアレルギー反応が存在しそのメカニズムは未解明と示されており、IgG抗体によるアレルギーはこちらに分類されると考えられます。IgG抗体を調べる遅延型アレルギー検査は日本では10年前から弊社がご提供を開始しており、全国の医療機関でご利用いただいてきました。これまでにたくさんの症例が報告されています。

【即時型アレルギー反応】
  • IgE抗体が皮膚・腸粘膜・気管支粘膜・鼻粘膜・結膜などにいるマスト細胞に結合した状態で抗原と出会うことにより、マスト細胞から化学伝達物質(ヒスタミン、ロイコトリエン、等)が放出され、アレルギー反応が引き起こされる。
  • 食物アレルギーの多くはこのタイプであり、ほとんどの例で、該当する食物を摂取してから 2時間以内にアレルギー反応を認める。
【非即時型アレルギー反応】
  • IgE抗体に依存しない非即時型(遅発型、遅延型)と呼ばれる反応で、メカニズムは未解明だが、T細胞の関与(Th1/Th2のバランス偏奇説、等)の可能性がある。
  • 抗原摂取後、アレルギー反応出現まで数時間を要する。

出典:厚生労働省健康局がん・疾病対策課 平成23年「アレルギー疾患の現状等」

IgE抗体とは異なる反応を示すIgG抗体

IgEで反応する食品がIgGでも同様に反応するとは限りません。逆に、IgGで反応する食品がIgEでも反応するとは限りません。アレルギー的な症状がある方は、病院で保険適用のアレルギー検査をお受けになりますが、これはIgE抗体を調べる検査です。

しかし、中には何度検査をしてもすべて陰性で原因のわからない方がいらっしゃいます。そのような方がIgGの検査をお受けになると、普段よく食べている意外な食品が高反応で驚かれることがあります。更に、検査結果に基づいて高反応の食品を除去することで症状が軽減することがあります。このようなケースにおいては、遅延型アレルギーは検査IgE陰性で原因がわからない方のための補完的検査であると言えます。

出典:アンブロシア社内資料

大好物が高反応でびっくりすることが多い遅延型アレルギー

栽培・輸送・食品加工の技術が発達した現在では、旬の感覚が薄れ、その人が望めばほとんどの食品を1年中食べられる世の中になっています。また、健康番組などで体に良いとされる食品を毎日意識的に摂取する傾向もあります。遅延型アレルギーは、気づかず食べ続ける傾向があることから、大好物や健康のために積極的に食べている食品が反応していることが多くあります。

もし高反応の食品が見つかったら

よく召し上がっている食品であれば、2週間ほど食べないようにして、体調の変化をモニターしてみるのが一般的です。個人差は多くありますが、症状の原因食物であった場合、食べなくなってすぐに変化がわかる場合もあります。一方、皮膚症状などの場合には、3週間以上経ってから顕著な改善が見られたという報告も聞かれます。除去をしても何ら変化がなかった場合には、量や頻度を考えてお食事に戻していきます。

食べた覚えの無い食品が高反応の場合

可能性は3つあります。1つめは、加工食品やサプリメントに姿を変えて含まれている場合です。2つめは、同じ食品ファミリーの別の食品を食べている場合です。同じファミリーの食品はたんぱく質の構造が似ているため、同様の反応を示す場合があります。3つめは、花粉や動物などとの交差反応があります。木や草などから、花粉は1年中飛散しています。ナッツや果物は特に交差反応が多く報告されている食品です。また、ゴム手袋に使われるラテックスとの交差反応も報告されています。

心当たりがまったく無い、ほとんど食べていない場合は、除去の対象からははずし、心当たりのある食品だけを除去するようにしてください。

原因食物が特定できたら

反応が低くなるまで除去を続けることが理想的です。完全除去が難しい場合には症状が出ないレベルまで量や頻度を減らします。遅延型アレルギーの場合、反応が下がればまた食べられるようになる可能性があります。除去期間中にプロバイオティクスの摂取などで腸内環境を整えることも早く反応を下げて再び食べられるようになるための手助けになります。

除去期間中のお食事

何かを引いたらその分足す、がお食事の原則です。たとえば、卵を主なたんぱく源にしていたという方は、お魚やお肉、大豆など、その他のたんぱく源をバランスよく摂取するようにしてください。食のチョイスは豊富にあります。除去期間中も工夫をこらしてお食事を楽しんでください。ひとつの食品だけに偏らず、バランスの取れた食生活はアレルギーになりにくい食生活とも言えます。何を食べてよいかわからない場合には栄養士のアドバイスなどを受けるようにしてください。

加工食品はよくラベルを読んで

加工食品にはたくさんのアレルゲンが含まれています。必ずラベルをよく読んでからお買い物するようにしてください。また、ラベルをよく確認するようになると、家では決してお料理に使わない物質(添加物)がたくさん使われていることに気づくようになるでしょう。添加物は商品の保存性を高めたり、色を鮮やかに保つために使われていますが、こうした化学物質もアレルギー発症の引き金になっていると言われています。新鮮な旬の食材を選んでなるべく自分でお料理しましょう。手作りのお食事は、添加物を避けられるだけでなく、栄養面でも優れています。

高反応の食品がたくさん見つかったら

全体的に反応の高い方がいらっしゃいます。たとえば果物のグループのすべて、野菜のグループのすべてが高反応といった方です。こうした場合、すべてが症状の原因ということはあり得ないというのが提携ラボの意見です。このような場合には、反応している食品グループの中からよく召し上がっている食品をピックアップし、それを食べないようにしてみます。結果として除去をしなかった食品まで全体的に値が下がったケースが多く報告されています。食べていないものやほとんど食べていないものまですべて高反応を示す理由はまだわかっていませんが、おそらくは腸内環境の乱れや炎症が原因であると考えられています。除去期間中に腸内環境の改善に配慮することも全体的な反応を下げるために効果的と言われています。

全体に値が低いケースも

低い値は基本的には正常であり望ましいものですが、ほとんどの食品が0~1レベルであり、その中にあって3レベル程度の反応が顕著に高く見える場合に、3レベルの食品の除去での改善例が報告されています。何らかの症状にお悩みの場合は、やや高めの食品に対し2週間程度の除去を行ってみることもひとつの方法です。

除去していた食品を再導入する際のポイント

少量をまず食べてみるのがポイントです。たとえば以前に牛乳を毎日1L飲んでいたからといってまたいきなり1L飲み始めるのではなく、小さめのコップに1杯から始めましょう。また、複雑な調理方法でなく出来るだけシンプルに食べてください。卵なら手の込んだ卵料理ではなく、ゆで卵にしてお塩だけで食べるといった感じです。複数の食品を除去していた場合は、そのうちひとつだけを再導入し、2~3週間程度かけて注意深くモニターしてください。

遅延型アレルギーの症状

遅延型アレルギーの症状は、多岐に渡るのが特徴です。アレルギー的な症状もあれば、頭痛や消化不良や関節痛のような症状もあります。イライラやうつ状態など、メンタル面に影響を与えている場合もあります。睡眠の質、疲労感、食後の強い眠気、痩せにくさなど、症状とまでは呼べないがその人のQOL(生活の質)に少なからず影響を与えているケースもあります。また、複数の症状が同時に発生しているケースが多く報告されています。

IgG陰性だ→食べてもOK!ではない場合も

前述のとおり、IgEとIgGは反応に違いが見られることが多くあります。過去にIgEアレルギーがありずっと食べていなかった食品がIgGで陰性だった場合、その食品を今後摂取するかどうかについては必ず担当医に相談してください。アナフィラキシーの経験がある場合も同様です。子供の頃にIgE検査を受けたきりでその後ずっと検査をなさったことのないという方が多くいらっしゃいます。

食物の除去&ローテーションガイド

検査結果レポートと一緒に「食物の除去&ローテーションガイド」をお送りしています。名前を変えて加工食品やサプリメントに含まれている食品やそれぞれの食品がどのファミリーに属しているかなど、検査後のお食事の参考となる情報が書かれた冊子です。ご活用いただき、より良い食生活の指針としていただければ幸いです。