アレルギー虎の巻 ― 診断・管理ガイドライン

 

2010年12月に発刊されたアレルギー専門誌(The Journal of Allergy and Clinical Immunology)で、米国における食物アレルギーの診断・管理ガイドラインの改訂版が掲載されました。ニューヨーク市のマウントサイナイ医科大学のヒュー・サンプソン博士と、ベセズダのアメリカ国立衛生研究所のマシュー・フェントン博士は記者会見を開き、この新しいガイドラインで取り入れられた3つの重要点について説明しました。

第1に、過去10年から20年間にすべての年齢において食物アレルギーの有病率が著しく上昇しているという点で、かなりの意見の一致が見られます。米国人口の約3%から5%もしくは1000万から1200万人が食物アレルギーの影響を受けていると推定されています。興味深いことに、抗原に特異的なIgE抗体はたいてい生後2年以内に出現するにもかかわらず、大人であっても小児期以降に接触した食物抗原に対して新しい感作を起こす場合があります。未治療のまま放っておくと、アレルギーは喘息の悪化やアナフィラキシーなどの致命的な反応の危険因子になりかねません。

第2に、子供の食物アレルギーは固定的ではありません。若い年齢で食物アレルギーが発現した子供の約80%は克服することができます。しかし、小児期のアレルギーの消失は可変的なプロセスであり、個々の子供や抗原の型に依存します。子供にみられるアレルギー抗体の高い初期レベルは、時間とともに症状が消失する割合の低さと関係しています。卵アレルギーと牛乳アレルギーは非常に若い小児に最もよくみられるアレルギーですが、多くの場合10代の間に消失します。しかし、ピーナッツ、木の実、シーフードのアレルギーはより持続的であり、しばしば生涯にわたって続きます。これらのアレルギーを持つ子供のうち、わずか10%から20%のケースで症状が消失します。

第3に、患者のアレルギー精密検査において医師が直面する頻度が最も高い問題の一つは、アレルギー感作と臨床反応度の混同であるとサンプソン博士は考えています。アレルギー抗体の血清濃度の上昇や、穿刺試験による皮膚反応サイズの拡大は臨床反応のリスク増加と相関しますが、特定の食品に対する陽性結果は感作の兆候にすぎません。「感作」は、その患者が反応を示す確率が標準を超えていることを示しますが、反応の重症度に関する保証や予測はありません。サンプソン博士によると、感作が臨床反応と結びつくかどうかを断定するには、患者の病歴と経口負荷試験に基づき医師が検査結果を解釈することが必要です。このガイドラインでは、食物によって誘発されたアレルギー反応の同定の補助として、抗原特異的血清IgEの検査を勧めています。


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