上院公聴会で子供の健康に対する有害物質のリスクを検証

 

上院環境・公共事業委員会のスーパーファンド・毒物・環境衛生小委員会は2010年10月26日、公聴会「子供の環境衛生と有害物質」を開きました。これは、ニュージャージー州のローテンバーグ上院議員による指導のもと、環境における一般的な化学物質への子供の暴露が環境衛生に及ぼす影響を議論し、1976年に制定された有害物質規制法(TSCA)の立法改革を提案するために行われました。この法令により、環境保護局(EPA)は米国で製造、利用されている化学物質に対する権限を持ちますが、EPAが既存の化学物質の安全性を審査、断定する際に強制力を持つプログラムをTSCAは所有していません。さらに、TSCAが制定された当時に商業で用いられていた化学物質はすべて、評価されないままこの法令の適用を回避しました。公聴会を呼び掛けたリサ・ジャクソンEPA長官によると、現在TSCAのリストにある84,000種類を超える化学物質のうち、子供に対するリスクが調査されたものはほとんどありません。ローテンバーグ上院議員が提案した新しい法律のもとでは、化学製造業者は発売前に安全データを公表し、自社製品の安全性を証明しなければなりません。

CNNの医療担当責任者であるサンジェイ・グプタ博士は、昨年6月に放映された特別ドキュメンタリー番組「トキシック・アメリカ」の取材を通して得た実地経験に基づき証言を行いました。グプタ博士は取材から、アメリカ人の化学物質についての見方がEU加盟国のものとは異なり、健康への影響によって「有罪であると証明されるまでは無罪」と捉えられているため、それが不幸にも起こった場合には国民は皆モルモットと同じ立場に置かれることに気付いたと述べました。一方、EUはリーチ法(REACH, Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)に基づき、より予防を重視した姿勢をとっています。化学物質とその安全な使用に関する法律であるREACHのアルファベットはそれぞれ、Registration(登録)、Evaluation(評価)、Authorization(許可)、Restriction(制限)、Chemicals(化学物質)を意味します。グプタ博士は、この問題に関して行動を起こしヨーロッパという隣人から学ぶべきであるとの意見を議会に対して述べました。

白血病、脳腫瘍、喘息、神経発生障害、自閉症、肥満などの小児期の疾病は増加傾向にあり、子供を持つ親や洞察力のある消費者らは今日商業目的で使われている約84,000種類の化学物質の長期にわたる安全性についての保証を求めています。演説者の多くが繰り返し述べたように、子供や発育中の胎児は環境毒物に対して特に脆弱です。1つ目には、大人と比べ子供はより多くの食べ物、水、空気を消費し、これらに含まれる有毒な化学物質を吸収します。2つ目に、小児や乳児は塵のある地面の近くで生活します。塵というのは、コンピューター画面、テレビ、家具、カーペット、マットレスなどに使われるポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE類)や難燃剤、カーテン、フローリング、壁紙、洗剤や石鹸に使われるフタル酸塩、プラスティック容器、瓶、ピザ箱、食料品店のレシートに使われるビスフェノールA(BPA)から出る毒性物質が蓄積したものです。塵には、屋外からの農薬や除草剤の残留物、コールタールのシーリング材からの多環式芳香族炭化水素(PAH)なども含まれる可能性があります。3つ目に、子供は生物学的にも脆弱です。発達途中にある神経、免疫、生殖のシステムや肺などの器官はまだもろく、毒性物質によるダメージは多くの場合回復不能であり、生涯にわたる機能障害をもたらします。特に、成長中の胎芽、胎児、そして新生児はたった一回のわずかな暴露に対しても非常に脆弱です。臓器が発達する重要な時期における暴露が、生まれてくる子供の健康や幸せを永久に害してしまうかもしれないのです。

自閉症と免疫性障害を抱える息子・ハリソンの母親であるニュージャージー州のリサ・ユグナン博士は、息子が生後18か月のときに語彙や運動能力が落ち始め、2歳で自閉症と診断された時には喘息、非IgE媒介の食物アレルギーや自己免疫問題などの健康問題にも悩まされていたと証言しました。ユグナン博士は環境科学とヒト暴露評価に関する博士号を保有し、その分野の科学者として、また発達上・健康上の問題を持つ子供の母親として、自分自身、夫、自分の両親の幼児期における毒物暴露の長期的な影響や、ハリソンの後の世代への影響についての疑問や不安を抱えています。

公衆衛生学修士号と博士号を持ち、コロンビア大学にある子供の環境衛生センター(CCCEH)の所長を務めるフレデリカ・ペレーラ氏は証言の中で、神経発生的障害と有害物質との関係について話しました。米国では小児の17%が学習障害もしくは注意障害と診断されており、それらの病因が一貫して内分泌攪乱物質(EDC、ホルモン産生と活性を妨げる化合物)によるものであることが研究から明らかとなっています。EDCへの暴露による合併症としては、神経、生殖、免疫に対する影響や発生への悪影響などが挙げられます。ペレーラ博士は12年間にわたる国際的な研究を行いましたが、妊娠時から母子の経過観察を行うコホート研究もこれに含まれています。この研究の目的は、妊娠中に子宮に侵入する汚染物質や化学物質を特定・測定し、子供の成長時の発達や健康に対するそれらの物質の影響を分析することでした。ペレーラ博士は、ニューヨーク市で行われた2つのコホート研究の結果から、空気、妊婦の尿サンプル、新生児の臍帯血、幼児から検出された化学物質(フタル酸塩、ビスフェノールA、PBDFF類、有機リン酸系殺虫剤、クロルピリホス)を強調しました。これらは環境の至る所に存在すると同時に成長中の胎児や小児にとっては危険な化合物であり、妊娠期間の短縮、遅発性および低下した精神運動・精神の発達、注意力欠陥、多動、低いIQスコアと関連しています。CCCEHの研究は進行中ですが、これまでの所見は胎児や小児の毒物暴露と神経発生における有害な効果との関連を強く支持するものです。同様の結果はポーランドと中国の妊婦について行われたコホート研究にも見られました。

フタル酸塩は世界で最も使われている生産用化学物質の一つであり、その使用量は年間180億ポンド以上にのぼります。疾病管理センター(CDC)の第4暴露報告書によれば、蔓延した環境暴露によって私たちの尿には複数のフタル酸塩代謝物が含まれています。フタル塩酸代謝物であるフタル酸モノエチル(MEP)は、米国民やオランダとワシントン州の妊婦人口の間で非常に高いレベルでみられる化学物質です(Center for Disease Control & Prevention 2010, Ye et al., 2008., Schreder, 2009)。MEPはフタル酸ジエチル(DEP)の代謝物であり、フタル酸塩は内分泌攪乱物質であることも既述の通りです。これらは私たちのホルモンや内分泌系に影響を及ぼし、生殖異常や先天異常、特定の種類の癌を引き起こす可能性があります。DEPは化粧品、個人ボディケア用品、香水、家庭用クリーナーなどに使われています。多くの場合、石鹸や洗剤など家庭用クリーナーのラベルには、香料を含む内容物の9割以上の原材料が記載されていません。

環境中の毒性物質に対して最も脆弱なのは、発育中の乳児を含む最も若い人口です。議会が予防的な化学物質政策に向けて重要な問題に取り組む中、患者の慎重なスクリーニングに欠くことのできない臨床ツールとして、臨床検査が医師らに使われ続けています。

環境汚染物質パネルは、6つの環境毒性物質の代謝物に加え、フタル塩酸の代謝物であるフタル酸モノエチル(MEP)を測定することができます。このパネルは、Dip’ N Dry採尿ストリップを用い、分析物の安定性と再現性を高めています。簡単に受けることができます。

U.S. Senate Committee on Environment & Public Works. (2010) Hearing: Subcommittee on Superfund, Toxics, and Environmental Health Field Hearing entitled, “Toxic Chemicals and Children’s Environmental Health.” Available from: http://epw.senate.gov/public/ Ye, X., Pierik, F., Hauser, R., et al. (2008). Urinary metabolite concentrations of organophosphorous pesticides, bisphenol A, and phthalates among pregnant women in Rotterdam, the Netherlands: The Generation R Study. Environmental Research, (108)2:260-267. Schreder, E. (2009). Earliest Exposures A Research Project by Washington Toxics Coalition. Available from: http://watoxics.org/publications/earliest-exposures Center for Disease Control and Prevention (2010). Fourth National Report on Human Exposure to Environmental Chemicals. Available from: http://www.cdc.gov/exposurereport/


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